幕末オオカミ


「……きったねぇ顔……」



あたしを見下ろした総司は、眉をひそめてそんなことを言う。


自分の顔の状態はわからないけど、あたしはとりあえず鼻の下をぬぐいながら反論した。



「ひっど……バカ」


「バカだよな…相当重症みたいだ、俺の頭は」


「今頃気づいた?バーカバー……」



最後の一音は、口を塞がれて言えなかった。


傷ついた総司の血の味が、あたしの舌に乗っかったから。


何が起こったか理解する前に、それは離れていった。



「って……」



自分でしておいて、総司は忌々しそうにうなった。


どうやら、爪を噛み砕いた時の口の傷が痛いらしい。



「……そ、そ、そ……」


「あ?」


「今、何して……」


「……だから、俺は重症なんだよ。
お前が……」


「は?あたしが?」


「……いや、人が死んだ時にする話じゃねぇな」


「ちょっと待てー!気になるじゃないかっ!」



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