幕末オオカミ
「あ……」
一瞬のこと。
総司はまた、あたしを腕の中に閉じ込めた。
「……説明、なぁ……したかったから、した。
それでいいか?」
低い声が鼓膜に浸食する。
それは一瞬で、あたしの体温を上昇させた。
「さっきの……お前が、の続きは……?」
「お前が鼻水たらしてようが、デメキンみたいだろうが、可愛く見えるのが悪い。
どうだ、重症だろう」
総司は開き直ったのか、なかばやけくそ気味に言った。
「……どういう、意味……?」
「……わかるだろ」
「わからないから聞いてるんですけど……」
頭上から落ちてきたのは、また舌打ち。
なんなのよ、可愛いって言ったり、舌打ちしたり。
可愛い……
そうだよ、総司の口からそんな言葉を聞く日がこようとは!
混乱したあたしの頭を、なんとかしてよ。
「……お前、さっきまで幼なじみが死んで泣いてたのに……
薄情なやつだな」
総司は逃げるように、話題を変えようとする。
そんなこと、許さないんだから。