幕末オオカミ
「そうだよ、あたしは薄情者だよ。
幼なじみを裏切ってまで、アンタを選んだんだから」
「…………」
「……責任、とってよ……」
それがあたしの精一杯だった。
情けないけど。
それ以上は、言葉が出なかった。
あたしは、死ぬまでに。
一度でも、アンタに言えるんだろうか。
好き、だなんて──。
じっと見つめると。
切れ長の目が、見開かれたようにして。
近づいたと思ったら、ゆっくりとそのまぶたを閉じた。
まだ痛いはずの口が、あたしの唇をふさぐ。
あたしもまぶたを閉じて、それを受け入れた。
「……そばにいて……」
一瞬自由になった唇で、それだけ言うと。
総司は答えず、またあたしの唇に、ひとつ。
その想いを、落とす。
寒い夜空の真ん中。
月だけが、それを見ていた。