幕末オオカミ
「どういうことだ」
「だから……っ、自分の女が同じ部屋じゃ落ち着かないんです」
「ほう、自分の女か。言うようになったじゃねぇか」
「昨日だって、手を出すのを我慢に我慢して、大変だったんです」
「そうだな、屯所じゃまずいな。
斉藤に見られた日にゃ、生きていけねぇよな」
「そうなんです……」
なぜかクタクタの総司を、ものすごくニヤニヤした副長がなだめていた。
その顔は、面白いおもちゃを与えられた子鬼そのもの。
「まあ、良かったじゃねぇか。
お前は奥手すぎるから、いつまとまるかと思っていたが……」
「土方さん、じゃあ……」
総司の顔が希望に輝く。
しかし副長が、簡単に願いをかなえてくれるわけはなかった。
「よし、二人が本当にまとまったという証拠を見せろ」
「はっ!?」
「部屋割り変えてやるわけだし?
まさか、俺をタダで使おうって気はねえよな、総司に楓よ」
こいつ……やっぱり鬼だ。
昨日はいい人かも、なんて思ったのが間違いだった。