幕末オオカミ
陽炎……。
彼は忍であるがゆえ、自分の任務をまっとうできずに死んだ。
武士も忍も、一緒だ。
いつ死ぬかわからない……。
常に危険に身を置く新撰組なら、なおのこと。
「……ここからは、俺のわがままだけど。
いつ死ぬかわからないなら、なるべくそばにいたいと思った」
「……総司……わがままなんかじゃないよ。
あたし、そばにいてって、言ったもん。
今も、そう思ってるよ?」
「ありがとう。でも……」
総司は少し、寂しそうな顔をした。
その長い節くれだった指が、あたしの頬をなでる。
その無骨な腕からは想像できないほど、優しく。
「……お互い何も知らなければ、引きずるものもないだろ?」
「…………」
「江戸の女達とお前は違う。
軽蔑してもいい。
俺が大事に思うのは、お前だけだ」
そういうと彼は、軽く、触れるだけの口付けをした。
それは次第に、甘く溶かされるようなものに変わっていく。
体の力が抜け、立っていられなくなりそうだった。