幕末オオカミ


そんなあたしの腰に手をそえ、総司が支えてくれる。


顔を離した総司は、低い声で続けた。



「だから、ここまでにしておく。

できるだけ、我慢する」


「……総司、あたし……」


あたしでも総司の心の支えになれるなら、何でもしてあげたいのに。


「言うな。

お前がいいと言っても、俺が良くない。

な?引きずる思い出は、少ない方がいいだろ……」



総司はあたしを引き寄せ、ぎゅうと抱きしめた。


次第に力加減を学習したのか、その力は心地よくあたしを締め付ける。


呼吸をしているだけで、涙が出そうだ。


この幸せが、いつまで続くかわからない。


この人は、武士だから。


いつ死んでしまうかわからないから。


すでに覚悟は決まっていて、だから、バカみたいにあたしを気遣ってくれる……。



「勘違いすんじゃねぇぞ。

決して、お前に魅力がないとかそんなじゃねぇからな」


「うん……」


「ま、いつ限界来るか本当にわからないけどな」


「なんだよそれ」


「……本気で惚れてるってことだ」



それだけで、あたしの言葉を奪うにはじゅうぶん。


なのに、総司はオマケに自分の唇で、あたしの唇をふさいだ。


ねえ、総司。


あとどれくらい勇気が持てたら、あたしたちは抱き合うことができるのかな……。


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