幕末オオカミ


そうして平穏が戻った屯所で、あたしは以前のように働いていた。


監察の仕事や総司の夜勤の見張りで、時は矢のように過ぎ去っていき、気づけば桜の季節になっていた。


「お帰りなさい、斉藤先生!」


あたしは屯所の入口に向かって駆けていった。


旅姿の斉藤先生は、早速被っていた笠を脱ぐ。



「出迎えご苦労。変わりないか」



斉藤先生とは、あたしが大奥から逃げてきたと知られた時は、微妙な雰囲気になったこともあったけど。


陽炎の一件が落ち着いてからは、以前のように接してくれている。



「はい。先生もお元気そうで」


「局長室に行く。お前も行くか?」


「はいっ」



そう、斉藤先生はある任務で旅に出ていました。


先生が陰陽術の修行をしたという、高野山まで。


その任務とは……




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