幕末オオカミ
「あ、あぁ……」
副長は、少し表情を硬くした。
そして、ゴホンと咳払いをすると、わざとすましたような顔で言った。
「いや、人が自分でもののけの力を身につける事ができるなら、産まれつきのもののけの力を消失させることもできるんじゃないかと思うんだが……」
そうそう、あたしもそれを期待していたんだ。
副長と考えることが一緒だなんて、気持ち悪いけど。
そんな方法があれば、総司から狼の力を奪うこともできるんじゃないかと思った。
総司が普通の人間になれれば、本人も色々悩まなくて済むのに……
そんな夢は、すぐには叶いそうにない。
ため息をつきそうになった瞬間、斉藤先生が穏やかな顔で、副長にこう言い放った。
「はぁ、沖田のためですか」
げふ、と副長は飲み込もうとしたお茶でむせて咳き込んだ。