幕末オオカミ
「これはどうするかな」
そう言いながら、沖田はあたしの長すぎる髪を、くしゃくしゃとなでた。
もちろん、てぬぐい越しに。
「ふきゃんっ」
「じっとしてろ。水滴で床がべたべたになる」
そういうことね……。
あたしの髪はむりやり洗われた犬のような、無残な造形になった。
「兄上、脇差(ワキザシ)を貸してくれない?
あたし、苦無と手裏剣しかないんだ」
「?」
不思議な顔をしながら、沖田は意外とすんなり、脇差をあたしに差し出した。
刀は武士の魂とか言うから、もしかしたら断られるかと思ったのに。
まあ、いいや。
あたしはそれを受け取ると、紐がとれて、床にまでついた長い髪をひっつかみ。
ざり。
背中のあたりで、切った。
「おい……!」
「い、痛た……」