幕末オオカミ


「……竹取物語?」



と、表紙には書いてあった。



「ああ、えろうすんまへん。
……娘さん、どうかしはりましたか?」


「あ、いいえ……どうぞ」



あたしは本を、店主に返した。



「おおきに」



店主は微笑し、奥へ戻ろうとする。



「あの」


「へえ」


「竹取物語って、あの、かぐや姫のお話ですよね?」


「そりゃあそうでっしゃろ」



何を当然の事を聞いてくるのだろう。


店主は訝しげな顔をしていた。


そうだよね。


それ以外の深い意味があるはずがない。





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