幕末オオカミ


「いるかこんなもーん!!」



とは言えない。今は任務中。


にやにやしている店主を殴りたいが、そうもいかない。



「いややわ、おじさんったら」



慣れない京言葉で柔らかく返し、あたしはその場を後にした。



「あのじじい、いつか後から手裏剣投げてやる……」



結局その後も、大した情報は得られなかった。


屯所に帰る道すがら、散り始めた桜の木に心を奪われる。


道にはらはらと散って落ちた花びらは、無残に踏まれていた。


もう、春も終わってしまう。


あたしの春は、いつまでもつんだろうか。




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