幕末オオカミ


と、とにかく沖田を探そう。


あたしは急いで顔を洗い、壬生寺へ向かう。


たまに、八木さんちの子供たちにせがまれて、遊んでやったりしているからだ。



「沖田はんがやる鬼ごっこの鬼は、本当の鬼みたいや」



大きな体と切れ長の目で真剣に子供たちを追う姿を見て、八木さんの奥さんが笑っていた。



「いない……」



しかし、日も傾きかけ、茜色に染まる壬生寺には誰もいなかった。



「しょうがないな……」



目を閉じて、深く息を吸う。


斉藤先生にもらったお札のおかげで、あたしの霊力も、少しは強力になったはず。


斉藤先生のように、霊力で沖田の気配を追う。



「ん?」



ってことは、斉藤先生が探せば済むことじゃん?


そんなに急ぎの用じゃないってことか……。







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