幕末オオカミ


髪の毛を刀で切るのは、頭皮が引っ張られて、意外に痛い。


沖田は呆れた顔で、その大きな手を差し出した。


「まったく、どういう女だよ……。
貸せ。やってやる」


「……お願いします」


沖田は脇差を受け取ると、あたしに髪の根元を押さえるよう指示した。


ざり、ざり、と音が聞こえる。


足元には、奥入りする前から伸ばした髪が、ぱさりぱさりと、床に落ちていく。


「あぁ……不ぞろいだけど、しょうがない。
今度髪結いが来るまで、我慢しろ」


沖田はそう言うと、あたしの背中についた毛を、ぽんぽんと払ってくれた。


「ありがとう……」


こいつ無愛想だけど、意外と面倒見いいんじゃ……?


しかし沖田は何も答えず、そのへんにあったほうきをつかみ、床の掃除をしだす。


あたしは残った髪を、頭の横で一つに結んだ。


手ぐしで適当だけど、忍の村ではいつもこうしていた。


「兄上、ねえ、見て?可愛い?」


「あぁ?知らねぇよ」






< 35 / 490 >

この作品をシェア

pagetop