幕末オオカミ
髪の毛を刀で切るのは、頭皮が引っ張られて、意外に痛い。
沖田は呆れた顔で、その大きな手を差し出した。
「まったく、どういう女だよ……。
貸せ。やってやる」
「……お願いします」
沖田は脇差を受け取ると、あたしに髪の根元を押さえるよう指示した。
ざり、ざり、と音が聞こえる。
足元には、奥入りする前から伸ばした髪が、ぱさりぱさりと、床に落ちていく。
「あぁ……不ぞろいだけど、しょうがない。
今度髪結いが来るまで、我慢しろ」
沖田はそう言うと、あたしの背中についた毛を、ぽんぽんと払ってくれた。
「ありがとう……」
こいつ無愛想だけど、意外と面倒見いいんじゃ……?
しかし沖田は何も答えず、そのへんにあったほうきをつかみ、床の掃除をしだす。
あたしは残った髪を、頭の横で一つに結んだ。
手ぐしで適当だけど、忍の村ではいつもこうしていた。
「兄上、ねえ、見て?可愛い?」
「あぁ?知らねぇよ」