幕末オオカミ
屯所裏の林についた頃には、
空は茜色から紫へと変わりつつあった。
屯所の桜が風に乗って、花びらだけをはらりはらりと送ってくる。
そんな美しい光景の中、総司はある人と一緒にいた。
「平助……くん?」
なんだか、ただならぬ雰囲気だ。
今にも剣を抜きそうな……。
何か言い争ってるみたい。
いつも温和な平助くんが、眉を吊り上げて総司をにらんでいた。
そして、突然平助くんが総司の胸倉をつかむ。
「──あっ……ダメ!!」
とっさにあたしは、二人の前に出てしまった。
驚いた二人は、目を丸くしてこちらを見つめる。
「私事の闘争は許さず!
局中法度に背くなら、監察として副長に報告しますよ!」
「……うっせえな、黙ってろよ」
「総司、そういう言い方ないだろ」
平助くんは穏便に、総司の胸倉をつかんでいた手を離した。