幕末オオカミ
総司はそう言うと、勝手にあたしの手をとって歩き出した。
あたしは何も言えず、そのあとをついていく。
頭上では、ははらはらと、終わりかけの桜の花びらが舞っていた。
「花見もしねぇうちに終わっちまったな……」
総司の背中から、寂しげな声が響く。
「ぱっと咲いてぱっと散るのが、潔くていいんでしょ。
武士みたいで」
「ありきたりだな、その例え」
「う……っ、確かに。
山南先生みたいに、たくさん本を読まなきゃね」
「春画本ばっか見てんじゃねぇぞ」
「それは原田先生たちでしょっ!」
空いた手で広い背中を叩くと、総司はやっと、小さく笑った。