幕末オオカミ


平助はまっすぐに俺をにらむ。


俺は……すぐに、視線をそらしてしまった。



「……何かあったのかよ、お前ら」


永倉さんが聞く。



「何もないっすよ」


「ないことないだろ。
総司は一人で、何もかも抱えすぎだ」


「黙れ、平助っ!」



団扇を投げつけると、平助はそれを平然と片手で受けた。


こんなところで、何を言い出す。


あの、桜が散っていた日……。


お前だから、俺の秘密を打ち明けたのに。


皆の前で話してどうする。


全員に知られて、心配されるのなんか、御免だ。


楓に同情されるのは、もっと御免だ。


だから、突き放そうとしているのに……。


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