幕末オオカミ


「あんなぁ、楓くん。

子供やないんやからわかると思うけど……男が一番すきを見せるのは、行為の後なんや。

男は単純やから、女子を抱けば、心を許す。

行為が終われば、その女子を征服したような気になるものなんや。

その時が一番、仕事がやりやすい」


「……まさか、あたしにそれをやれと……」



桝屋喜右衛門なる男と寝ろと?


総司以外の男に触れられる。


想像しただけで、目の前が暗くなっていくような気がした。


岡崎の村のくの一たちも、そんな任務についていたのだろうか。



「必ずやれとは言ってない。
ただ今回の任務は、失敗は許されない。
どうしてもスキが見えなかったら、の話だ」



土方副長が気まずそうに言った。


いつものように、茶化したり挑発したりしない。


それは、本気だから。


本気で、弟分の女を、敵地に送り込む気でいるから……。


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