幕末オオカミ
1.紹介
もう8月も終わりに近づいていたことを知ったのは、ついさっきのこと。
大奥では、ただだらだらと日が過ぎていくだけで、今日が何月何日かなんて、全然わからなかった。
沖田は早朝に、握り飯持参で蔵へやってきた。
「それを食べたら、顔を洗え。
幹部たちに、紹介することになった」
「おぉ……」
幹部か。
どんな人たちなんだろう。
荒くれ者たちの幹部だもの、みんなゴツくて強面だったりして。
「幹部が了解したら、そこで初めてお前は正式入隊になる。
了解されないように、せいぜい無礼な発言をしてくれ」
「えっ、ちょっとちょっと!何それ、ひどくない?!」
沖田はどうしても、あたしが入隊することが嫌みたい。
それにしても、あからさまだなぁ。
昨夜、あたしを説得できなかったから、土方に怒られたのかな。
「でもさー、いやらしいよねー。
説得したいなら、自分が来ればいいのに」
「誰の話だ」
「土方に決まってんじゃん」
その名を呼び捨てにした途端、沖田の顔色が急変した。
切れ長の目がつりあがり、鬼のようになる。