幕末オオカミ


「やはり、見つからないか……」


「はい。

芹沢がもののけの力を得たのは、お梅に会ってすぐです。

粛清してからそう何年も経っているわけではないので、まだどこかに手がかりが残っているかもしれないと思ったのですが……」



先に話した声は、土方副長のもの。


後の声は、斉藤先生のようだった。


斉藤先生は、芹沢がもののけの力を手に入れた方法を、あれからも探していたんだ……。


そっと耳をすませていると、土方副長の舌打ちが聞こえてきた。



「そうか……山南さんの方は?」


「あぁ……できる限りの文献を調べてはみたが……」



山南先生の声は、元気がないように聞こえた。


一瞬、古本屋をのぞいていた先生の姿を思い出す。


山南先生も、土方副長の指図で、何か調べ物をしていたんだ。


でも、いったい何を……。



「やはり、彼のような例は他になくて……
外国では、狼に育てられた子供が保護されたという例はあるみたいだが」



狼。


その単語が、頭の中を駆けていった。


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