幕末オオカミ


「その場合、人間社会に馴染めず、結局短命に終わった例が多いみたいだ」



短命……?



「そんな事はいいんだよ。
どうにかアイツを救う手だてはねぇのか!」



苛立ったような副長の語調に、山南先生はすまなさそうに返す。



「私だって、力を尽くしたつもりだよ。

伝承の中に手がかりがないかと、狼に関する物語もシラミ潰しにした。

しかし……かぐや姫が竹取りの翁に残した、不老不死の薬でもなければ……どうすれば良いか、私もわからない」



かぐや姫……


初めて、総司の狼化した姿を見た時を思い出した。


そうだ、故郷で母が話してくれた伝説……。


かぐや姫が竹取りの翁に発見されてから短期間で成人したのは、彼女が狼女だったから……



「っそ……
どうにかしなきゃ、総司は、このまま……っ」



土方副長の悔しげな声が、胸を突き刺す。


総司が、なに?


このまま……って?










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