幕末オオカミ


「今更、逃げないでよ。
あたし、離れないから。

それに、あんたが死んだって、思い出引きずって不幸になったりしないから」


「楓……」


「だって、その時は、あたしも死ぬから。
あたしは、あんたを失ってまで、生き続けるつもりなんかない……!」



すがりつくと、総司の顔から笑顔が消えた。


たちまち眉間にシワが寄り、あたしをにらみつける。



「何言ってんだよ」


「あんたが死んだら、あとを追うって言ってるの」


「そんなの、許すわけねぇだろ!」



大きな手が、あたしの肩をつかんだ。


その力はバカみたいに強くて、痛い。



「許してもらえなくたっていいよ。
アンタが亡きあと、あたしは追い腹を切る」


「バカ野郎……」


「じゃあアンタは、近藤局長が亡くなっても生きていける?

新撰組がなくなったら、生きていける?」


「…………っ!」



アンタは、ただひとつの、希望の光。


少なくとも、あたしにとってはそうなんだ。


行くところがないあたしを、拾ってくれた。


いつもそばで、見守ってくれた。


時には厳しく、叱ってくれた。




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