幕末オオカミ


その後あたしは、局長の部屋へ連れていかれた。


他の隊士たちは、道場で剣の稽古をしているらしい。


「失礼します、局長。妹を連れて参りました」


「うむ。待っていたぞ、さぁさぁ」


沖田は一礼し、入室。


あたしもそのあとに続き、一礼した。


「お、女だ……」


「しかも、若い……」


そんな声が聞こえてきた。


部屋にいるのは、近藤先生と土方の他に5人。


その5人は、ぼんやりという感じでこちらを見ていた。


「さっさと挨拶しねぇか」


土方が、ものすごく機嫌の悪そうな顔で言う。


「あ、えと……楓と申します。歳は十七。忍の術が多少使えます。よろしくお願いいたします」


深々と頭を下げ、上げた瞬間ににこりと笑いかけた。


いい印象を持ってもらうには、笑った方がいいんじゃないかと思って……。


しかしそれを見た者は全員、なんだか変な、微妙な顔をしていた。


笑いをかみ殺しているような……。


なんだよ、ムリに笑って損した。ちっ。

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