幕末オオカミ
4.密偵
次の日。
あたしは予定通り、任務に出ることにした。
「……行けるのか。失敗は許されねぇぞ」
土方副長が、山崎監察と化粧をしている部屋に勝手に乗り込んできて、言った。
「大丈夫です。昨日はすみませんでした」
頭を下げると、土方副長はふん、と鼻を鳴らした。
「小娘が素直だと、気味が悪いな」
「あたしも副長が優しいと、悪寒がします。
気があいますね」
「けっ、言ってろ」
「楓くん、紅がはみだしてまう。
ちょっと黙ってんか」
山崎監察に言われた通り、口を一文字に結ぶ。
女好きの桝屋陥落のため、いつもより入念にされる化粧。
見た目が子供のあたしを、何とか大人の女性にしようと必死だ。
うー、笑っただけで、厚く塗ったおしろいがパキっといきそう。