幕末オオカミ
「よし、完璧や。
どっからどう見ても、可愛い素人娘さんや」
山崎監察が紅筆を置き、押さえ紙を寄こす。
余分な紅をとって、化粧が完了した。
「いつもながら見事だな、山崎くん」
「へえ、おおきに。
素材がいいとやりがいがありますわ」
「ちょっと、総司に見せてこいよ。
あ、着物は脱がされるなよ」
昨日の事には触れず、二人とも明るい調子で話す。
だから、あたしに気を使ってるのバレバレですってば。
「うーん、じゃあちょっとだけ……」
あいつの顔見てから行くか。
立ち上がり、ふすまを開けた瞬間……。
「わっ!!」
そこに隠れていた大男が、のけぞってしりもちをついた。