幕末オオカミ
打ち合わせもしていないのに声があってしまって、あたしたちは、顔を見合わせて笑った。
うん、大丈夫。
いつも通り、笑える。
そんなふうにのほほんとしていたら……。
廊下を、大急ぎで走ってくる音がドタドタと聞こえた。
「楓くん、いるかっ?」
「ああ良かった、間に合った……」
「局長!山南先生!」
顔を出したのは、近藤局長と山南先生だった。
二人ともぜえはあと、荒い息を吐いている。
「楓くん、コレを持って行きなさい」
息を整えながら、山南先生が懐から何かを取り出した。
差し出されたそれは……
「簪(かんざし)?」
「山崎君、すまない。
これをどこかに差せないかな?」
「ああ、じゃあ交換しましょう」