幕末オオカミ
桝屋喜右衛門は、商売が終わる夕方を過ぎると、島原に向かって、ぶらぶら歩き出す。
そこで好みの女性を見かけると、すぐ声をかける。
家に連れ込むことがほとんどだが、誰も捕まらなければ、仕方なく島原へ行く。
──以上、山崎監察の情報より。
それが日課だというから驚きだ。
というわけで、あたしは桝屋から少し離れたところで待機している。
すぐに捕まった方が、家に入りやすいから。
山崎監察の調べによると、桝屋はちょっと色っぽい女が好きなんだとか。
その様に、乳を寄せて上げて、襟を少し抜いてきたが、果たして効果はあるのだろうか。
「あ……」
桝屋から、本人が出てきたのを確認する。
「よし」
山崎監察の立てた作戦に従い、物陰に隠れる。
そして、桝屋が近づいてくる足音に耳をすませた。