幕末オオカミ
「な、何だよ総司!
こんな可愛い妹がいるなんて、聞いてないぞ!」
最初に声を上げたのは、沖田と同じくらいの歳に見える、若い男だった。
茶色のふわふわとしたくせ毛を、短く切っている。
ハイカラだな。
……っていうか、可愛い?
それ、あたしのことだよね?
てか、あなたの方が可愛いという表現にぴったりなんですが……。
「彼は藤堂平助(トウドウ・ヘイスケ)。
役職は副長助勤。総司と同じ歳だよ」
近藤先生が、口添えする。
「妹は、産まれてすぐに里子に出されたんです。
そこで忍の術を仕込まれたんだが、最近、その養父母がコレラで亡くなった。
そこで、兄の俺を頼ってきたんです」
沖田は、意外と流暢に、全員に向かってそうウソをついた。
なるほど、そういう設定になってるんだね。
「総司の妹だけあるよなあ……」
藤堂と呼ばれた彼は、ぽつりとつぶやき、座りなおした。
どういう意味?
凶暴そうってこと?
「で、だ。山崎君」
「はい、局長」
これまた背の高い大男が返事をした。
歳は土方と同じくらいかな。