幕末オオカミ


桝屋は裏の住居の入口からあたしを招き入れた。


母屋から少し離れたところに、蔵があるのが見えた。


あらかじめ、その位置を確認しておく。



「さあ、はよう。足を見てやろう」


「…………!」



蔵の方を見ていたあたしを、桝屋が引っ張る。


すぐに座敷につれて行かれ、ふすまを閉めた瞬間、桝屋は性急にあたしにのしかかってきた。



「あれ、やめて、だんなはん……」


「足を見てやるだけや」


「ああ、ご無体を……」



うえぇぇぇぇえぇ。


我ながら、なんて気持ちの悪い!!


桝屋の鼻息はすでに荒く、どこか生臭い。


手は必死で、あたしの着物を剥ごうとしている。


『少しは抵抗された方が燃える』


そう言っていた山崎監察の言葉を信じて、一度桝屋の肩を押し返そうとする。

< 410 / 490 >

この作品をシェア

pagetop