幕末オオカミ
……というわけで。
「ぶえぇぇぇぇ……」
すっごく、嫌だった。
気持ち悪かった。
けど、桝屋が夢中になるまでは我慢したんだ。
吐き気が全身を襲う。
あたしはごしごしと、唇をぬぐった。
これで、されたことがなくなるわけじゃないけども。
しかし、桝屋が助平で、逆に助かったのかもしれない。
会話をしなくて済んだおかげで、ボロが出なかった。
あたしはぱん、と両頬を叩く。
さあ、誰も来ないうちに調べ物をしなければ。
あたしは緩んだ帯もそのままに、蔵へ急ぐ。
表の鍵は、桝屋の懐から拝借してきた。
いそいで鍵を開け、扉を開く。
そこで見たものは……
「……桝屋、やっぱり黒か!!」
思わず声が出た。
薪や炭の間にあったのは、紛れもなく鉄砲や刀などの武器、それに……
独特の、鼻を刺すような刺激臭。
「火薬……!!」