幕末オオカミ


あたしは勇気を出して、口を開く。



「……抱っこ」


「あぁ?」


「抱っこ、して」



昨日、武器・弾薬・さらには連判状まで見つけたあたしは大手柄。


その後の手配と会議で忙しく、気づいたら深夜だったため、総司と話ができなかった。



本当は、怖かった。


嫌で嫌で、しょうがなかった。


風呂でいくら体をこすっても、桝屋の生臭い唾液のにおいが、いつまでもまとわりついているような気がした。



「…ったく、てめぇは……!」



総司は荒々しく、あたしを抱き寄せた。


ぎゅう、と痛いほどの力が腕や背中にかかる。


鼻が総司の胸板につぶされて、ちょっと痛い。


だけどあたしは、それが嬉しかった。



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