幕末オオカミ


「がはっ、ぐ、ぁはぁっ、ごほっ、ごほ……っ!!」



上体を起こした総司は、体全体を揺らし、派手に咳き込む。


口を抑えたその長い指の間から、赤いものが吐き出されていた。


あたしの胸を汚したのは、総司の血だったんだ。



「総司……!!」



労咳のような血痰が出るとは、聞いていた。


でも、こんな大量に血を吐くなんて……!


獣に対峙した恐怖が、他の恐怖に変わっていく。


このままじゃ、総司は……!!



「ぁ、あぁ、……っ、ぐ、はぁああ……っ」



総司は咳こんでは血を吐き、荒い息を繰り返す。


なんとかしなきゃ。


なんとか……


霊力は効かない。


じゃあ、あとはあたしに何ができる?



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