幕末オオカミ
「…………あ」
そう、だ……。
あたしの血……。
あたしの血は、どんな病気にも呪いにも効く、万能薬。
死んだ陽炎がそう言っていた。
どうしていままで、忘れていたんだろう。
それが、本当ならば……
「総司……」
立ち上がり、総司に近づく。
その顔をのぞきこむと、金色の目があたしに噛み付くようににらみつける。
呼吸がうまくいかないせいか、その目には涙が浮かんでいた。
むき出しになったままの牙の横。
頬をなでると、彼はびくりと身を震わせた。
「大丈夫、怖くないよ……
苦しいよね。
今、助けてあげるから……」
あたしの声は、聞こえているのだろうか。
相変わらず喉を鳴らし、総司は呼吸が整うのを待っているようだった。