幕末オオカミ


「総司、あたしに噛みつきな」


「…………」


「言ってる事、わかる?
あたしの肉を食べろ。血をすすれ」



そう言っている途中でも、総司は咳き込み続ける。



「言葉、わかんないのかよ……」



こんなことなら。


一瞬だって、傍を離れるんじゃなかった。


……ううん、あんたは……


狼化するのを抑えられないのを、わかってたんだね。


だから、こんな姿を誰にも見られたくなかったから、


あたしに近藤先生のところへ行けって言ったんだね。



……武士は、本当に馬鹿な生き物だ。


そんな矜持が、何の役に立つっていうの。



気づけば、ボロボロと涙が頬をつたっていた。



……絶対、死なせたりしない……!






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