幕末オオカミ


苦無の切っ先が、その肩に刺さる直前。


金色の目から、ぎらりとした一筋の光が動くのが見えた。



次に自覚したのは────



牙が突きたてられた、痛み。




あたしの突然の攻撃に、総司はとっさに反撃したんだ。


そして、あたしの首に、噛み付いた。



「……っ……」



痛いなんてものじゃない。


すぐに、意識が遠くなっていく。



「総司……」



噛み付いた総司は動かず、じっとしている。


あたしが息絶えるのを、待っているのだろうか。



「……これで、治るよ……きっと……」



抱きつくようにして、総司の広い背中をなでる。


その手も、すぐにしびれてきてしまった。





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