幕末オオカミ


「……ね、え……」



聞こえてる?


ああ、自分が終わっていくのがわかるのに。


あんたに何を伝えていいのかわからない。


ただ、不思議と恨みはなかった。


痛み、恐怖、後悔、切なさ、悲しみ……


そんなものが溢れるなか、確かにあるのは。


どうしようもない、愛しさ────。



「……だい、すき、よ、
そう、じ……」



もっと、伝えていれば良かった。


結局、一回しか言えてなかった気がする。



「……聞きた、かっ、たな……
あんたの、気持ちも……」



奥手なあんたは、言ってくれなかった。


でも、わかっていたよ。


ずっとずっと、不器用でも、あたしを見守ってくれていたよね。


< 461 / 490 >

この作品をシェア

pagetop