幕末オオカミ

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俺は……何をしてる……?



狼の体から、人間の体に戻っていく感覚がする。



俺は…………


池田屋に斬りこんで、そして……


そうだ、近藤先生を見送って、一人で二階を受け持った。


浪士達を斬るうち、月が見えて……


やっぱり、狼化したのか……。



口の中で、鉄のような嫌な味がする。


しかしその中に、どこか懐かしいようなにおいがした。



「…………、え……?」



唇に触れる柔らかな肌の感触に、ハッとする。


腕の中にあった正体不明の物体から、顔を離す。



「…………!?」



それは、信じられない光景だった。


俺の腕の中で、楓が首から血を流して気を失っていた。


明らかに、獣に噛み裂かれたあとが、その首にあった。






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