幕末オオカミ
真新しい着物に袖を通し、袴をはく。
ほんの少しの荷物を風呂敷に包み、あたしはその玄関に立った。
「楓ちゃん、またいつでも来てな?
おばちゃん、不憫でかなわんよ……
なんでこんな細い女子が、新撰組に……」
「奥さん、それ八木さんにも言われましたから」
「あ、そうなん?」
あっさり涙を止めたのは、この家の奥さんだ。
そう、ここは会津藩お預かりの、お医者様の家。
池田屋のあと、あたしはここに運び込まれた。
あたしは誰より重症だったらしく、屯所にいるよりもこちらのほうが安心だということらしい。
とにかく、あれからひと月が経って、首の傷はしっかり塞がった。
縫った皮膚が引きつれる感覚があるけど、すぐに慣れるだろう。
「お世話になりました!」
めでたく復帰許可が下りたあたしは、奥さんや先生に深く礼をして、その門をくぐった。