幕末オオカミ


「あっつー……」



久しぶりに直撃する夏の日差しに、すぐにくじけそうになる。


池田屋も相当暑かったけど、夜だったもんなー。


手でひさしを作り、屯所へ向かおうとすると……



「おい」



後から、声をかけられた。


低く、獣のうなるような声。


まさかと思って、振り向く。



「……あー!!」



そこには、耳もしっぽもない、人間の姿の総司がいた。



「生きてたの!?」


「このとおり。勝手に殺すなよ」


「だって、あんた、一回もお見舞い来てくれなかったじゃん!!
この薄情者ー!!」



駆け寄り、叩いてやろうとすると、総司はあたしの手をつかんでそれを阻止した。



「……悪い。どんな顔して来ればいいか、わからなかった……」



総司は、ぽつりとつぶやいた。


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