幕末オオカミ
それはまさしく、池田屋騒動以前の総司で、あの夜の恐ろしい獣のにおいはしなかった。
「そんなの……」
「話はあとだ。今は仕事中。
早くお前を島原に連れて行かないと、切腹させられる」
「えっ?」
ぐい、とあたしの手をひいて、総司はにやりと笑った。
「うちの組はおせっかいなやつが多くてよ。
お前の快気祝いをやるって、きかねえんだ。
言いだしっぺが局長なんだから、断るわけにはいかねえぜ?」
「快気祝い!?局長が、あたしのために!?」
そのためにわざわざ、島原で宴会を開いてくれるってこと?
局長……やっぱ神!!
そうしてあたしたちは、島原に向かった。
その途中、総司は池田屋騒動以降に起こったことを報告してくれた。