幕末オオカミ


「泣くなよ」


「気にしないで、うれし泣きだからぁぁぁ」


「……そうかよ。じゃあ、もう一回泣かしてやる」


「えっ?」



総司は耳元で、小さく囁いた。


それは、あたしの胸を締め上げ、宣言どおり、大粒の涙を誘発した。



「う、うわあああん!」


「ガキかよ!叫ぶな!」


「だって、だってぇぇ……」



嬉しさのあまり総司に抱きつくと、よしよしと頭をなでられてしまった。



「……ったく、可愛いったらねぇなあ」


「うわあああ、死にかけて性格変わってるぅぅぅ!」


「たまにはいいだろ、こういうのも」


「とか言いながら、どさくさにまぎれて脱がしてるぅうう」


「据え膳喰わぬは、武士の恥ってな」


「言うと思った、絶対言うと思ったぁぁ!」




< 483 / 490 >

この作品をシェア

pagetop