幕末オオカミ
そのまま、城からの追っ手をまきながら、走りに走り続けた。
野を越え、山を越え……
「ぜはっ、ぜはー……」
もう、何日たったんだっけ?
息が切れ、のどが渇いてひりひりと痛む。
陽が昇れば、この忍装束はいささか目立ち過ぎるな……。
あたしは天下の往来を歩く事は許されず、中仙道に沿って、物陰をひたすら歩いた。
空腹は、川の水や木の実でしのいで。
やっとこさ、江戸城から遠く離れた、京の街に着いた。
んだけど……
「腹、減ったなぁ~……」
ぎゅるる、と腹の虫がなる。
大奥にいれば、食べ物に困る事はなかった。
座っているだけで、三食とおやつが運ばれてきたんだもんなー。
あたしはほんの少し、後悔しはじめていた。
抜け出してしまったはいいが、その後のことは何も考えていなかったから。
とにかく、どこかで、食料と着物を獲得して……。
働くところを、探さなきゃ。
下働きでも、何でも良いから……。
「……お」
その時、ちょうど。
本当に丁度良い感じの民家が、目に入った。