幕末オオカミ
「だから言っただろ……」
沖田は、蔵に戻るなり渋い顔でそう言った。
「まさか、あんなに飢えてると思わなかったんだもん……」
初めて男にあんな風にちやほやされ、あたしは浮かれるというよりは疲れきっていた。
「こんな醜女でもいいなんて……
あんたたち、島原に行くお金さえもらってないわけ?」
首をかしげると、沖田は「はぁ?」という顔をした。
「お前それ、本気で言ってるのか?」
「え?」
「あの人たちは、調子はいいけど、醜女にちやほやするほど、飢えてはない。
しゅっちょう遊里に遊びに行ってるからな」
「それって……?」
どういう意味?
「……自分を醜いと思わない方がいい。
上様と俺たちじゃ、感じ方が違うんだろう」
「つまり……?」
「だから……」
沖田は、首の後をバリバリかき、覚悟を決めたように、口を開いた。