幕末オオカミ
「おい、開けろ」
低い声とともに、蔵の戸がどんどんと叩かれる。
あたしは、何かに弾かれるように立ち上がった。
「沖……兄上っ?」
急いで戸口の閂(かんぬき)をはずす。
すると、暗い蔵の中に、日の光が射し込んだ。
現れたのは、沖田と山崎監察、そして、優しそうなおじさんだった。
「今後の事について、話がある」
そう言って、沖田はすばやく蔵の戸を閉めた。
「はじめに、さっきいなかった幹部を紹介する。
井上源三郎さんだ」
「はじめまして、楓さん」
「は、はじめまして!
よろしくお願いします!」
井上先生は、にこにこと笑っていた。
さすが、おじさんだけあって、永倉先生たちより落ち着いている。
「さっきは私と斉藤くんで隊士の朝稽古をつけていて……欠席してしまったので、挨拶に来たんだよ」