幕末オオカミ


外は、意外に涼しかった。


そう言えば、もう8月(現暦9月)も終わる。


もう夏は終わり、秋の気配が、着物の袖を揺らした。


他の隊士や村人に見つからないように、屯所を出たあたしたちは。


……のぞきをしていた。


「沖田……ここって、普通の民家じゃ……?」


そう言ったあたしに、沖田はしぃ、と口に人差し指をあてて見せた。


「ここは、八木邸。新撰組の、もう一つの宿所だ」


「あぁ、前に言ってた……」


「あれを見ろ。それぞれの顔を忘れるな」


あたしたちは木の上にのぼり、屋敷の中を見ていた。


座敷からは、ドンチャンと、箸で茶碗を叩くような音がする。


まるで、宴会場のようなそこには、あわせて5人の男がいた。


同じ枝にのぼった沖田が、小さな声で説明する。



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