幕末オオカミ


台所に近づく。


幸い人の気配はないようだ。


「よしよし……」


奥で食べてたのは白米だけど……
もうこの際、何でもいい!!


空腹に耐えかねたあたしは、かまどに近づきふたを開け、手をつっこんだ。


おお、なんと優しいぬくもり……!


早朝に炊かれたと思われる米は、まだ温かさを残していた。


あたしはそれを、にぎり飯にする。


塩がほしいけど、もちろんそれを探す余裕はない。


にぎにぎ……。


そして二つのにぎり飯ができた。


「いただきまーす!!」


台所から出て屋敷の裏に回り、両手に持ったにぎり飯を、交互にほお張った。


う、うまい……!


形は悪いけど、腹が減ってれば何でもうまいっ!!



あたしは夢中で、にぎり飯にぱくついていて、気づかなかった。


人が近づく、気配に……。






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