幕末オオカミ


「お前……何をやる気満々なんだ?」


「もちろん巡察ですっ、副長!」



出かける直前、蔵を訪ねてきたのは、鬼副長・土方歳三だった。


「……まあ、いいが……十分気をつけて行けよ」


「えっ、はい……」



雪でも降るのか?


あたしの入隊を快く思ってないはずの土方副長が、「気をつけろ?」


怪訝な顔をしていたあたしを見て、土方副長は、真面目な顔をした。


そして、低い声で呟いた。



「……夜は、昼間見えなかったものが見えることがある」


「え?それって、逆じゃ……」


「じゃない。月夜にしか見えないものは、確かにある。
もし、信じられないものを見ても……それをベラベラ他人に話すような事はするなよ。
それが寿命を縮める事になるからな」


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