幕末オオカミ
何話してるのかな~?
うぅむ、手裏剣を投げてやりたいのに、他の隊士が邪魔で……。
しょうがない、今夜はあきらめるか……沖田が一人の時を狙おう。
今夜は山崎監察に言われた通り、ここらへんの地理を覚える事に専念しようかな。
今後の任務に、京の地理を知ることは不可欠だろうしね。
地図を片手に、一番隊のあとをつける。
木がなくなれば、家の屋根に上ったり、建物の陰に隠れて移動した。
一番隊は、商家街を抜け、旅籠が並ぶ道を通っていく。
そして、無作為に、それに立ち入っていった。
「御免」
沖田が先頭に立って、旅籠ののれんをくぐる。
「へえ、なんでっしゃろ」
出てきた番頭は、青い顔で応対する。
名乗らずとも、あの目立つ羽織で、新撰組だということがわかるんだろう。
「宿帳を見せてください。
できれば全員、手形と照合してほしい」
「へえ、今から……全員ですか?」
「はい。できればで、かまいませんが」
沖田は存外優しい声音で言う。
口調も、局長に対するように丁寧だ。