幕末オオカミ
「猫かぶり……」
そんな柔和な態度できるなら、あたしにもそうしてくれたらいいのに。
ま、仕事だから、組のために仕方なくやってんだろうけど……。
近藤局長の顔をつぶさないよう、新撰組の悪名をこれ以上高くしないように。
「ご協力、ありがとうございました」
どうやら不逞浪士はいなかったらしく、一番隊は礼を言って出て行った。
そう、今の新撰組の主な仕事は、不逞浪士の取り締まりだ。
沖田率いる一番隊は、地味に、地道に、京の街を歩き回った。
「……つまんないの……」
意外と地味で大変なんだな、新撰組って。
あたしはため息をつき、ある旅籠の屋根から、京の街を見渡した。
もうほとんど、明かりは消えている。
暗い。あたしが夜目が良くなかったら、手元の地図もほとんど見えないだろう。
まだ明るいのは、お茶屋とか、旅籠とかか……
「ん?」