幕末オオカミ
あるお茶屋の二階に、あたしの視線は誘われた。
格子の間から、見覚えのある影が見えたからだ。
「タヌキとキツネじゃん!」
ちら、と沖田たちの方を見る。
どうやら、気づいてないらしい。
相変わらず、地道に旅籠巡りをしている。
「ちょっとだけ……いっちゃうか!」
要は、ちゃんと屯所に帰れれば良いわけじゃん?
地味な巡察見てたって、肩がこるだけだし。
沖田はこっちなんか、ぜーんぜん気にしてないみたいだしね!
あたしは、一番隊にくるりと背を向け……タヌキとキツネが見えたお茶屋の方に、屋根づたいに近づいていった。