幕末オオカミ
その部屋の中では……
本物のタヌキと、本物のキツネが、酒盛りをしていた。
いや、本物じゃない。
タヌキとキツネは、顔は獣そのもので、首から下は人間の体をしている。
呼ばれた妓たちは、美人だけど、魂を抜かれたような顔をしていた。
どんよりとした目は、何も写していない。
「ぇ、えぇーっ!?」
と叫ぶのは、何とか堪えたけど……
これって、これって……
もののけ!?
「ぁ……っ」
その場から、一歩退いてしまったのは、無意識。
足下で、古い瓦がカチャリと鳴った。
「!!誰かいるのか!?」
気づかれた!!
背中を、冷たい滴が駆け抜ける。